A Quarter Century Ago Today 25年前のロサンゼルス日記

25年前にロサンゼルスに滞在していた時の日々の記録。25年後のその日に公開していきます。

Rhythm&Hues

May 10th, 1998

 

 5月25日のMemorial Dayに、ついにアメリカ版ゴジラ"Godzilla"が公開になります。英語での発音は「ガズィーラ」と表記するのが一番近いと思います。これはSony Pictures Imageworksがここ最近一番力を入れていた作品です。

 ロサンゼルスのあちらこちらに"Godzilla"の巨大広告ポスター(横断幕?)が貼ってあります。"Size Dose Matter"(「その大きさがものをいう」)、"He is twice as big as this building." また少し離れた建物2つに、"His Tail is from here to"、"Here"なんてあったりします。

 宣伝はしているものの、ゴジラの映像は極端にながれません。これらのポスターも全部文字だけです。劇場でのトレーラーも足しか映りません。この足を見ると、古くからのゴジラファンはあれはゴジラじゃなくて恐竜だと言って、大抵否定的なコメントをします。
 とはいえアメリカでもゴジラ人気は高く、公開後は一種のゴジラブームが来ると思います。ということは、日本も半年後位には....。


 この間ついにRhythm&Hues(R&H)の見学に行ってきました。当初はR&Hで働く知人に頼んで個人的に行くつもりだったのですが、USCの学生の何人かも行きたいということだったので、R&Hの広報を通しての正式な?見学をアレンジしました。
 スタジオは私のアパートに極めて近く、車で10分位の所にあります。イマジカUSAもこのすぐそばになります。

 まずはR&Hの手がける作品のデモリールを見せてもらいました。CMと映画、そして大型映像をバランス良くこなしているという印象を受けます。CMでは、コカ・コーラのクマさんは日本でも有名かもしれません。色々なカテゴリーの中でも、大型映像の比率は他の映像プロダクションよりも高いと思われます。
 
 ラスベガスの新作アトラクション、"Star Trek the Experience"や"Race for Atlantis"の両方をほぼ同時期にこなしているということは特筆に値すると思います。この他、フロリダのユニバーサル・スタジのハンナ・バーバラのライドなども手がけています。
 また2年程前?の作品ではありますが、和歌山リゾート博のために作られた"Seafari"は今でもR&Hの代表作の1つです。この映像には26人が2年間たずさわったそうです。
 新作には、フロリダの"Bugs Life 3D"というのがあるそうです。これは劇場映画の"Bugs Life"のテーマパーク版ということのようです。(だからユニバーサル・スタジオ?) 劇場版はまだ公開になってはいませんが、こちらはPIXARが制作でディズニーから配給です。(ということはエプコット・センター、あるいはアニマル・キングダムか??)

※ 1998年4月にアニマル・キングダムにオープンしていました。(2023年5月追記)


 この他、最近Game用の映像も手がけるようになりました。プレイステーション用の映像、"Eggs of Steel"がそれです。

 R&Hは、社長のJohn Hughesの思想もあって他のCGプロダクションに比べて非常にフレンドリーで、社員に温かいとよく言われます。(この他、PDIも同じように良く言われます。これに対してDigital Domainはすぐに人を解雇すると言われます。) 実際にスタジオを訪れてその雰囲気は何となく感じ取れました。スタジオの中には犬がいる部屋もありました。(^_^;
 毎週金曜日の昼にはBBQが駐車場で行われるそうです。250人程の社員が仕事以外でコミュニケーションを取れる機会を提供しているということです。32ヶ国の社員がいると言っていたので、大切なことかもしれません。
 どれだけ実現できているかは知りませんが、一日8時間労働を強力に推進しているとも言っていました。時間外労働の割り増し率が日本よりも高いアメリカは(確か1.5倍)、この辺の徹底が違うかもしれません。

 R&Hは、そのプロダクション作業をほとんどインハウスのソフトウェアでこなしていることでも有名です。それらのソフトは200台ほどのSGIマシンで動いています。
 CGの世界にも、NTへのダウンサイジング(余りこういう言葉は使わないかもしれませんが)の波が来ています。しかしインハウスでSGI用のツール群を大量に開発してしまっていると、いくらOpenGLが走るとは言ってもNTへの移行が難しいのではないかと感じてしまいました。

 オフィシャルのツアーの後に、R&Hのアニメーターとデザイナーの知人に色々とツールを見せてもらいました。ここのモデラーが非常にシンプルなのには驚きました。簡単なGUIはありますが、見た感じでは本当に簡単なプリミティブ・モデラーです。
 キャラクターなどの制作は、ほとんどクレイ・モデルからのデジタイズでやっているので、この方がモデラーが軽くて良いのかもしれません。
 ここで使われているレンダラーは、日本人が開発したものです。(今はR&Hから他のところに移ってしまいましたが) 市販レンダラーに比べて早いという話ですが、モーションブラーがちょっと遅いと言っていました。この他パーティクルのためのツールや、ネットワークのCPU管理ツールなども見せてもらいました。

 これだけインハウスのソフトが多いと、同じCGプロダクションから移ってきた人でも、すぐに制作に入ることができません。このための教育部門が別にありました。こうした組織的なところもよく出来ているという印象をうけました。(教育に関してはSony Pictures Imageworksもかなりしっかりとしていました。)


 滞在期間の残りも少なくなってきましたが、パラマウントとワーナーのスタジオにも見学のアポイントメントを入れようと思っています。