A Quarter Century Ago Today 25年前のロサンゼルス日記

25年前にロサンゼルスに滞在していた時の日々の記録。25年後のその日に公開していきます。

L.A.SIGGRAPH -Titanic-

Jan. 13th, 1998

 

 正月休みからロスに戻ってからは、授業その他で忙しい毎日で未だに部屋に掃除機をかける暇がありません。年越しの埃を早く吸ってしまいたいとは思うのですが。
 また蟻やノミが出るのもいやだし....。


 今日、L.A.SIGGRAPHの1月の講演がありました。会場はいつもと同じUCLA内のシアターです。デジタル・ドメインが話題の映画「タイタニック」に関する話をするとあって、前回とは比較にならない程の人があつまりました。会員から順にシアターに入場できましたが、非会員の人はほとんど入場できなかったと思います。先月のミーティングの際に会員になっていて私は助かりました。

 講演の最初に希望者が入場者に色々なアナウンスをします。「私は○○プロダクションの△△です。今、我々の所では時期プロジェクトのために、エイリアスのアニメーターを2名、レンダーマン・シェーダーを書ける人を2名、そしてシステム管理者を1名募集しています。希望の方はxxx-xxx-xxxxまで連絡をお願いします。」と、こんな具合です。


 さて講演は日本でもおなじみのスコット・ロスの挨拶で始まりました。これに引き続き「タイタニック」のスーパーバイザーを務めた人達が次々と講演を行いました。夜7時半から始まった講演は10時近くまで続きました。

 講演の内容は、彼らの制作プロセスの説明から、イメージ・コンポジットやモーション・キャプチャーに関する細かい技術的な話、そしてポスト・プロダクションの話まで実に多岐に渡りました。ここでは印象に残ったコンポジットとモーション・キャプチャーに関して少し記述します。


 ご覧になった方はご存知かと思いますが、3時間14分の長編映画のほとんどのシーンに、当然ですがタイタニック号が登場します。このタイタニック号のシーンのほとんど全てでコンポジットが行われています。
 メイキングの映像が流れましたが、素材分けは驚くべき細かさで行われていました。海(映画中の海はなんとほとんど全てCGです!!)は海そのものと、細かいしぶき、蒸気、波、ハイライト等、全て別素材です。更にタイタニック号もかなり細かいパーツで別レンダリングされています。そして船上の群集は3~5人位ずつで全部別々です。更に船の蒸気や背景の空も細かく素材分けされています。
 確かにこの調子でいけば、1シーンで100素材以上をコンポジットすることになるのもうなずけます。これらをフレームやインハウスのコンポジッター、「ヌーク」で重ね合わせているということです。

 船上の人のロング・ショットは全てCGです。甲板を歩く人達は衣服をつけた人に80個のマーカーを付けて光学式キャプチャーで動きをデジタイズしていました。(つまり衣服の揺れも取ったということです。) この甲板上の人の中にはデジタル・ドメインのジャンパーを着た人もいるそうです。(^_^;

 この他、沈むタイタニック号から落下する人の動きは、彼らがロト・キャプチャーという方式で取っています。通常のキャプチャーではデジタイズが不可能なため、スタントマンが18個のマーカーを身につけ落下する演技を2つのカメラでとらえ、後はアプリケーション上でキーフレームで動きをつけるということです。

 こうしたキャプチャーによる動きの採取をかなりやっていますが(モーション・ライブラリー構想があるそうです。)、実際に劇中に登場するキャラクターの動きの内15%はキャプチャーによるものだそうですが、残りの85%は結局人の手によるものだと言っていました。


 最後はただただ溜め息が出るばかりです。最後に流れた彼らがジョークで作った映像でかなり笑わせてもらいました。
 タイタニックの甲板上に、セサミストーリーのキャラクターが合成されていたり(かなりしっかりと動きもマッチさせてあります。)、船首に"Sink Me!"(「私を沈めて」)という垂れ幕をかけたタイタニック号が登場したりました。

 彼らの遊び心にも頭がさがります。