Sound Designer
May 8th, 1998
今日はUSCの卒業式でした。驚いたことに全体セレモニーは屋外で行われていました。卒業生とその両親が一同に集まれるホールがないというのがその理由のようですが、雨の少ないロサンゼルスとはいえ.....。雨が降らなかったから良かったですが。
その後、各学部毎の式がありました。テレビ・映画学部の式は、アカデミー賞の授賞式が行われたShrine Auditoriumで行われ、私ものぞいてきました。いつかアカデミー賞をと夢を抱いてハリウッドの映画界へと第一歩を踏み出す学生には、思い出深い式になったことでしょう。
私のいるコンピュータ・アニメーション学科の修士コースは今年から3年のコースになりました。従って今年だけは一人も卒業生がいないので、余りこれを身近な行事としては感じられません。
ただ、韓国から来ている学生が兵役のために卒業をせずに一時帰国します。兵役というものをアメリカに来てこれ程身近なものとして感じるとは思ってもいませんでした。
卒業式があるということは、春学期も終わりです。が、報告しそびれていたサウンド・クラスのことを今日は少し。
アカデミー賞の特殊効果音響部門を8回も獲得しているUSCの卒業生、Gary Rydstromがゲストだということで、1限のクラスにまたもぐってきました。映画で音を作っていく工程をたくさんのサンプルを使って分かりやすく説明していってくれました。
まずはOHPを使って作業のフローチャートを。一番最初に"Get Idea"。そして"Reject Idea"され、"Get Idea"、"Reject Idea"、"Get Idea"、"Reject Idea".....そして"Run Out of Time"になると。彼はこの笑いをとるこれだけのために、OHPプロジェクターを用
意させていました。
余り聞き慣れない職種ですが、サウンド・デザイナーの仕事はまず音の採取に始まります。彼は普段から本当に色々な音に興味を持って生活しているようです。
日本の九州に行ったときも、どこかのお寺で鐘を見つけてそれを叩いて音を採取したそうです。が、400年もの間お正月にしかついていない鐘だったそうで、住職さんに叱られたということです。しかし、こうしたことをしないと良い音は取れないと悪びれなく言っていました。
彼がてがけた映画をサンプルに、効果音の元ネタを色々と話してくれました。
「キャスパー」の幽霊達の声は、回転扉を逆に回して、ゴムがガラスに擦れる音、「ターミーネーター2」で液体金属のT-1000が溶けたりするところではドッグフードを缶から出す音、また「ジュラシック・パーク」のT-Rexは、倒れる木、鯨、小象、ワニ、ライオンの鳴き声と、更に交尾するカメの声!から作ったそうです。
効果音はなるべく素材分けして録って、後からコンポジットしていくということで、その工程は映像の合成にかなり似ているかもしれません。MacintoshのPro-Toolsというソフトウェアがその合成の業界標準的に使われているようでうす。
彼自身もそれを使い、個人的に140GB!にもなるサウンド・ライブラリーを持っているそうです。
この他、アニマトロニクス・バージョンのジュラシック・パークやダイアローグなしのトイ・ストーリーなど、貴重な映像もたくさん見ることが出来ました。
最後は、彼がサウンドを手がけた彼のお気に入り、PIXARの"Knick Knack"で締めくくられました。