A Quarter Century Ago Today 25年前のロサンゼルス日記

25年前にロサンゼルスに滞在していた時の日々の記録。25年後のその日に公開していきます。

NAB'98

Apr. 13th, 1998

 

 かなり強引な強行日程でNAB※1に参加してきました。

※1 NAB(National Association of Broadcasters)が主催してラスベガスで開催する世界最大の映像・放送関連展示会。現在は「NAB show」と言われている。(2023年4月追記)

 

 NABで発表されたことの多くは既に正確にインターネットで情報発信がされていると思いますので、主に私の感じた印象をここで。


 今回のNABのテーマ"The POWER of Digital"が現わす通り、デジタル時代を強く感じました。デジタル化がもたらしたことの一つは、コンピュータ、放送、フィルムといった分野の境界を分かり難くしたことだと思います。
 以前まで競合し得なかった、コンピュータのソフトウェア・メーカー、放送機器メーカー、そしてフィルム関連メーカーが同じ土俵で相撲を取る構図になりつつあります。特にSoftimageをかかえたMicrosoftが、CGに限らず放送分野にもかなり重点を置こうとしていることを感じました。

 Alias/Wavefrontの次世代CGソフト(と彼らは呼んでいます)MAYAのNT版は、完璧に動作をしていました。6月から出荷予定なので当たり前かもしれませんが、インターグラフで動いていた同ソフトをかなり酷使してもらいましたが、全く問題ありませんでした。

 グラフィックス・ボードに当然依存しますが、$10,000.00位のNTマシンで、ほぼOctane同様(O2以上)のパフォーマンスが出ているということです。実際にパーティクルなどの計算、表示も高速に行っていて、ちょっとショックを受けました。SGI、NTの混在環境も問題がなく、データの双方向のやりとりも大丈夫だということです。
 MAYAのレンダリング・パフォーマンスもAliasに比較すると大きく改善されています。少なくともアプリケーションからレンダリングする際に、情報を毎回(SDL)ファイルに書き出さないだけでも大きな違いです。(^_^;

 価格がIRIX版と同じだということは、我々にとってはいただけませんが、SGIがバックについている以上まあ仕方のないことかもしれません。このSGIは今回目新しい発表もなく、少し影が薄く感じられました。

 この他以前にも少しお伝えしたMaya Liveが製品として発表されました。これは実際の処理はリアルタイムではなされないため(シーンに依存しますが、5~10分と言ってはいましたが....)どれだけの性能かは正確には知り得ませんが、デモを見る限りではライブの映像から完璧に3次元のカメラ情報を抽出していました。これはかなりの驚きです。
 ベータ版もほとんどプロダクションに出荷できなかったということで、A/W社が作ったデモ以外には実際のCMやフィルムでの実績はまだありませんが、この性能が本物であればこれからどんどん使われだすのではないでしょうか。SIGGRAPHの頃にはフィルムのデモが見られることを期待しています。


 さて対するSoftimageは、かなりライバル意識むき出しのデモをしていました。(している兄ちゃんがいました。(^_^;)
 今回はSoftimage3D 3.8の発表なのですが、しきりに次期バージョン"Sumatra"を強調していました。これもMAYAを意識しているなと私は感じてしまいました。
 "Sumatra"のレンダリング・モジュールである"Twister"は一足早くお目見えするようです。これは属性を変更した部分だけ再レンダリングしてくれるという優れものでした。レンダラーのクオリティーはデモを見る限りでは余り良くありませんでしたが、例えばオブジェクトの反射係数を変更すると映り込みの変化だけが再計算されるというもので、これはちょっとした驚きです。
 私の聞き間違いかもしれませんが、これはソフトイメージのデータだけではなく、他アプリケーションにも対応していくようなことを言っていたのですが本当でしょうか....。

 Softimage DS 2.0という製品の発表もニュースです。これは完全にMicrosoftの戦略を色濃く反映させてものだと思われます。一言で言ってしまえばノンリニア編集システムです。これでデジタルの2D/3Dの素材作成から音を含めた編集までを、Softimageというオールインワンパッケージでできるようにするというのがその構想のようです。"Sumatra"ともGUIを統一していくという流れにあるそうです。
 1.0から4ヶ月で2.0が発表されたことで分かる通り、かなり力を入れていました。実際に導入実績もかなり延ばしていると自信を持って言っていました。

 ただ現状ではSoftimageの製品のラインアップが少し分かり難くなっていることも事実だと思います。


 最後のインディペンデントのCGソフト?、「フーディーニ」もNT上で動いていました。ただ、ちょっと元気はありません。SGI+Alias/Wavefront、Microsoft+Softimageという大物の中で頑張っていると思うと、ユーザーではありませんが応援したくなってしまいます。

 富士通もブースを出していて、プラズマ・ディスプレイを展示していました。ちょっとうれしかった?かな。


 この他デジタル放送機器の主導権を握るべく、SONYPanasonic他、多くのメーカーがデジタルシステムを並べていました。アメリカのメジャー放送局への導入実績を私が知っていたせいかもしれませんが、SONYよりもPanasonicに勢いを感じました。

 DVD関連は思いの他見かけませんでした。DAIKINはScenaristIIを出していましたが....。


 去年は花であったと言われる、バーチャルセット、そしてモーション・キャプチャー。今年も当然見かけはしましたが、既に目新しさはありませんでした。日進月歩は恐ろしいことです。


 以上まとまりがありませんでしたが、私が駆け足で見たNAB'98でした。