HVC Tour
Oct. 17th, 1997
ロスがここまで暑いとは思っていませんでした。これはエルニーニョの影響だそうですが、まだ日中の気温が35度近くになることも珍しくありません。こちらに来る前に調べるのを忘れてしまいましたが、ロスの緯度はどのくらいなのでしょうか?(※1)
※1 ロサンゼルスは北緯33度56分。日本の愛媛県新居浜市と同じのようです。当時は自宅からインターネットですぐに調べることができませんでした。(2022年10月)
エルニーニョ現象は今世紀最大規模で、この冬カリフォルニア州は豪雨に見舞われると今から言われています。大丈夫でしょうか。
14日(火)に、ハイビジョン普及支援センター(HVC)の視察団がUSCに来ました。USCの他にもデジタル・ドメインやリズム・アンド・ヒューズ、ソニー・イメージ・ワークスなどにも足を運んでいました。
デジタル放送の波の中、低迷している感が否めないハイビジョンですが、コンテンツを充実させることに低迷の打開の糸口を見出そうと、アメリカの映像コンテンツの制作の現場を視察するというのが、その目的のようです。
HVCは通産省の外郭団体ですから、ある意味でこの視察団は血税で来ている訳です。それに値するだけの成果を上げてくれればいいのですが....。
視察団のメンバーは、ソニーから出向中のHVCの方や、日立、NEC、松下、三菱、そしてCGプロダクションのイマージュ の結城社長などでした。こちらのCGプロダクションの視察、そしてロスで活躍する日本人クリエータとの懇談をアレンジするにあたって、結城さんに依頼がいったようです。
さてこの視察団ですが、全員がそうという訳ではありませんが、視察をしてそれを的確にフィード・バックするには少し歳を取り過ぎた人達のように私には感じられました。
かなり見当違いの質問をしてはそれを熱心にメモしていました。視察ですから当然レポートの提出が必要になるようで、今日は誰、明日は誰と、担当の順番を一所懸命に決めている姿は、私には非常に滑稽に映りました。(※2)
※2 「若気の至り」で、大変失礼なことを書いています。💦 ただ、当時はそう思ったのでしょう。(2022年10月)
USCへの視察の翌15日に、ロスで活躍する日本人クリエータとの懇談がダウンタウンのホテル、ニュー・オータニ近くの日本料理レストランで行われました。
視察団でも、ここで働くクリエータでもない私ですが、うまく話をつけてちゃっかりとこの懇談に顔を出してきました。おいしい日本料理もごちそうになってきましたが、決してそれが目当てで行った訳ではありません。(^_^;
懇談に参加した日本人クリエーターは以下の通りです。
岡野さん(リズム・アンド・ヒューズ)
佐藤さん(ディズニー・フィーチャー・アニメーション)
塩沢さん(デジタル・ドメイン)
山口さん(デジタル・ドメイン)
渡辺さん(マジック・ボックス)
ここで聞いた耳寄りな情報をいくつかご報告すると....、
ディズニー・フィーチャー・アニメーションでは、99年公開を目指して恐竜映画を制作しているそうです。人間は登場せず、恐竜達がしゃべるということです。
ディズニー流のややデフォルメ系の恐竜かと思いきや、かなりリアルな恐竜をCGで作っているということです。背景はほとんど実写で、CGの恐竜を合成するという、ロスト・ワールドと同じ手法で勝負するようです。ディズニーは制作中の映画に関してのガイドラインがしっかりとあり、聞き出せる情報はここまでということです。楽しみな作品です。
デジタル・ドメインですが、言わずと知れた?「タイタニック」の制作にここ数年全力投球をしていました。
スコット・ロスは制作は終わったと言っていますが、ジェームズ・キャメロンはまだ納得していないということで、実際にはまだ細かい修正を続けているということです。
制作が延びに延びて、完全に赤字になっているというもっぱらの噂ですが、とにかく来年のアカデミーを取るということを目標にして、かなり採算度外視の制作をしているようです。
デジタル・ドメインの実写合成はすごく良いということがよく言われますが、その秘密が少し分かりました。インハウス・ソフトのコンポジター(※3)がすごく素晴らしい出来であるということももちろんありますが、ビデオの編集畑からきたすごく色感のいいおじさんが一人いるそうです。この人が合成のチーフを努めているということですが、普通の人では全く分からないところまで細かい修正の指示が出て、完璧になるまでとにかく合成のOKはでないそうです。
※3 ”Nuke”というアプリで、当時はunixのコマンドラインベースで使っていましたが、その後発展してGUIが付き市販アプリになりました。今やプロユースのコンポジタとしてかなりのシェアを獲得している。(2022年10月 塩沢さん談)
1つのカットで1年間かけたものもあるという話ですし、1年かけて作っても不採用になったカットも相当あるそうです。
日本での東京国際映画祭での公開が、アメリカでの公開よりも先になるようです。これもすごく楽しみです。
この他にも色々と興味深い話がありましたが、最後に一つ。アメリカのCGプロダクションの中でも最大手の一つILMは、実は去年初めて黒字になったそうです。
それまではジョージ・ルーカスの資産など、他のところを食いつぶしていたそうです。あのILMが、です。CG映像制作は厳しい....。
懇談後も、2次回?でニューオータニのBarで夜中の1時過ぎまでコーヒーを飲んでいました。(みんな車なのでお酒が飲めません。)
この時間のダウンダウン、ホテルから道をはさんだ駐車場までのほんの1分程ですが、恐かった~!
こんな時間にコーヒーを飲んでしまうと私は....。そうです、お子ちゃまなので、疲れているのにやっぱり眠れませんでした。;^_^;